吉田
選手に対しては、やはり怪我をしないためにというのが先ず第一です。
コロナウイルスでの長期自粛後には、世界的に肉離れやアキレス腱だったり、腱や靭帯への怪我のケースが多くなっていました。
実際、私もそうなることは推測できていたので、そこへのアプローチは重点的に行いました。
特にシーズンの前半は筋力をちゃんと戻すことに重点を置き、焦りすぎないでじっくりプログラムを立てて実施していきました。
コーチ達とシェアして「この選手だったらこれくらいまでには筋力が戻せそうなので、出場時間等を考えていた等けますか」と言った形の情報共有を特に前半はやってました。
後半に関しては疲労のコントロールをしっかりできるようにという形で、データ取ったりトレーニングプログラムを修正したりと試行錯誤しながら取り組んでいます。
吉田
実際トラッキングシステムはチームにはありません。
なので練習中のパフォーマンスデータは取れないので、主観的な疲労度のRPEや、床半力を測定するフォースプレートでのジャンプなどのパフォーマンスデータを分析し、トレーニングのパフォーマンスに対する影響・効果や運動神経疲労などの指標をトラックキングして管理をしています。
それらのデータを定期的に取っており、数値やグラフでコーチたちに伝えて、練習内容やボリュームに関して、必要な場合は「疲労度が高いので、一旦練習の負荷を落として回復を促した方がパフォーマンスとしては良さそうです」のようなコミュニケーションは取っています。

吉田
試合や練習でより良いパフォーマンスが出せる状態に持っていくというのは大前提にあります。
そのためにアクティベートした方が良い筋肉へアプローチをしたり、可動域制限かかっている関節があればそれを獲得するエクササイズなどを行います。
選手個人個人で問題は違うので、個々にあったエクササイズプログラムを提供しています。
またアプローチの必要な問題がある選手には、コートに入る前にリハビリエクササイズやアクティベートエクササイズをやってもらっています。
筋バランスや身体の動きをきちんと整えてもらって、そこからフロアで実際にチームアップを行います。
チームアップの中では基本的にジョグやスキップなどからダイナミックストレッチで筋温や可動域、心拍などを徐々にあげていきます。
あとは動作の基本となるムーブメントドリルや、ニューロマスキュラー・ファシリテーションと言って運動神経の活性・促進のためのパワーやスピード、アジリティなどのエクササイズを入れていくという流れです。
最後にバスケットに近い動きを入れていくという感じですね。
単なるウォーミングアップというよりはムーブメントの獲得やトレーニング要素も多く含んでいる形になっています。
吉田
同じ様な流れで行っているチームはあると思いますが、色々な目的や手法のチームがあると思います。
アップの時間や所属する選手の状況によって内容も変わってきます。
私が経験したNCAAやNBAのチームも似た様な流れで行っていましたが、サンロッカーズ渋谷にあったものにアレンジをしています。

吉田さんが海外に留学されたお話を聞かせてください。
高校卒業後、渡米されトレド大学へ、その後埼玉ブロンコスへ選手として戻られました。
同時に明治大学と江戸川大学で並行しながらS&Cとして指導されていたんでしょうか。
吉田
そうですね。
当時は企業チームではなかったので普通に仕事してから、夜に集まって練習を行ったりしていました。

なるほど。
でも平日であっても大学でストレングスのコーチをされながら、土日は試合・・・非常に大変でしたよね
吉田
そうですね。
でも当時は若かったのでなんとか大丈夫でしたね。

その後フロリダ大学へ進まれました。
これはどういった経緯で進まれたのでしょうか。
吉田
大学院へ進学を以前から考えていました。
行くのならバスケットの良いプログラムがあって強く、かつスポーツ生理学の学術面でカリキュラムも充実している大学院を探していました。
この希望を叶えてくれるのがフロリダ大学でした。
フロリダ大学のバスケットボール部のヘッドS&Cコーチとコネクションが出来き、方向性などを共有しながらいいタイミングを待って進学したのが経緯です。


当時のフロリダ大学といえばビリー・ドノバン(現シカゴ・ブルズHC)がヘッドコーチの時代ですよね、
選手で言うと八村塁選手のチームメイトのブラッドリー・ビール選手(ワシントン・ウィザーズ所属)が在籍していたくらいですか。
吉田
大学院2年目の時にビール選手が入学してきましたね。
その年の12月にサンアントニオ・スパーズに行くことになったので半年程の短い期間ではありますが関わっていました。非常にWork Ethicが高く、しっかりとして考えを持った選手だった印象です。
ビリー・ドノバンは非常に誠実で熱意のあるコーチでした。
コーチとしてだけではなく、人格者で素晴らしい方でした。
スパーズのコーチ・ポップ(グレッグ・ポポヴィッチ)も同様で、そのような偉大なコーチのコーチングを経験できたのは本当に貴重で、今の自分自身のコーチングの大きな礎になっています。